「富士総合火力演習」へ見学に行かないですかと誘われた。名前からして仰々しく又それまで聞いたこともなかったので、その時は私のような普通一般人の行くところではない気がした。誘っていただいた方は大変年配の方であったしお断りするのも気が引けお供することにした。ネクタイをしていくのだろうかお聞きするなど今では笑い話である。

 富士山は何度か登ったことがあるので、その麓での演習ということに興味を持ったことも手伝った。車中泊は慣れていなく体の節々が痛くなったし眠れなかったが、朝方ほんの一瞬カーテンの間から富士山が見れ元気が出てくる。ついた駐車場は大型バスがところ狭しと並び、全国お国自慢の様相である。

 サングラスを胸ポケットにズックを履いて細い道をほんの少しばかり会場まで歩く。会場に近づくにつれすごい砲撃音が聞こえだす。本番前の試し撃ちなんでしょうか、その音は映画やTVなどで聞くものとは違い、またよく聞く夏祭りの花火とも違う、もっと凄みというか自然身構えてしまうような音であった。あたり一面の空気が震える、まさにそんな感じです。これがもし実戦であったなら大変な恐怖を感じ足がすくむと思いながら、ご一緒した方の表情を横目で見てみるが全然平気な風。

 迷彩服の自衛官を多く目にしだした頃会場入りとなった。特設スタンドが横に長く作られ、私達の座る場所もチケットによって決められていた。近くに関係者の席の縄張りがあったので、きっと一等席なんだろうと勝手に思ったりした。まだ始まっていないのに日傘を差している女性が後ろの方から咎められていたがこれは仕方のないことに思う。自衛隊のグッズを買ってきたり、トイレの順番待ちの様子を聞いたりと回りは賑やかだ。後から後から人は増えてくるが、目の前で上手にエリアを埋めていく誘導もきっと自衛隊の訓練の内なんでしょうか。巷のイベントなんかではこうはいかないと思って眺めていました。

 兎に角暑い。タオルで汗を拭きながら扇子で扇ぐ。帽子楽な格好をしてきてほんとうによかった。この日三万人を超える入場者数と後で聞いたが、ここへ来れば人の数とその占める面積の程が実感できる。スタンドですから高くなっていますが、演習場からはその分離れていますから戦車や隊員の姿は小さい。双眼鏡も持ってくればよかった。またカメラも望遠があれば便利と思います。平地に席を取った方は間直に見れる特典があると分かりましたが全体を見渡すにはスタンド席がいいとも思いました。

 あきずに人の流れを見ている内、音楽隊の演奏からとうとう始まります。天候の具合でいつもなら戦闘機の爆撃で始まるらしいのですが中止と放送が入ります。富士山は雲に隠れて見えないしちょっと残念。プログラムの流れは毎年同じなんでしょうか。大変手際よく進んでいきます。「テー!」「ダンチャーク!」戦車に赤旗が立つと射撃が始まるのだな、と段々慣れてきます。何せ富士山の麓は広いですから射撃をして随分たってまず弾着の煙が上がり、忘れた頃に爆発音が聞こえて来るという何とも不思議な体験をします。

 ここへおいでの皆さんはどういった方が多いのでしょう。若い方から年配の方まで思い思いの服と気持ちでここへ集まられたわけです。始め思っていた偏った感じは全然なく極々普通の方達だと判ります。自衛隊は人気があるんだなと思いました。目の前の兵器が実際に使われることなくあくまで防衛の為としてある限り、又皆さんのお財布に影響の少ない範囲である限りはこのように多くの支持が得られるのではないでしょうか。防衛だけに絞り込めば、これだけの装備を目にし、自衛隊だけで国は守れるような気がしましたが、力を持てば持つほど横柄になり孤立していくことは何につけいろいろ見受けられるところです。それらを踏まえて国力にあった力を自然な姿で持つのがよいと感じます。自分の国は自分で守る、当たり前のことですが、そんなこんなを考えさせられるよい機会でした。

 終了後駐車場までの帰りは当然混雑しますが、がまんできずに道の横であちこち用を足す男性の姿も多く、女性も多い中、短い距離ではありますが道中にもいくつかトイレの設置が必要かなと思いました。(演習場に用意していくといいと思ったものは赤く強調しておきました。)

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