Kyokuroku 曲(きょくろく) 曲録、曲木ともいうこのいすは曲線を多く用いているところから、この名前の由来があるようです。宋からの流れがあるそうですが、このような華麗な折りたたみ式は桃山時代からと見られています。京都高台寺蔵の曲録には蒔絵までが施されこの時代の気風が窺われます。
お葬式でよく見かけられた方が多いと思います。実際は法を説く為の道具として用いられたのが始まりと言われています。朱塗りに煌びやかな金具が映え大変豪華な宗教用椅子です。
この朱は少し以前までは水銀を漆に混ぜて発色させていましたから、大変高価なものでした。古墳などでも朱が使われていたそうですから、金と共に魔除けの意味合いがあったとも聞いています。
いすに座る文化は西洋からのもので、その歴史はまだ新しいものだと思っていましたが、日本に、こういったいすがあったことを思えば、もっと早く一般の生活に取り入れられても、おかしくはなかったのではないでしょうか。和風建築様式がいすを拒んだのか、畳の前には不要のものだったのか、想像が膨らみます。
さて、いすをめぐっては話題に事欠きません。新潟地震では、エコノミー症候群のような耳新しい言葉が、狭い空間で長くいすに座って起きた不幸な出来事です。一刻も早い復興が待たれます。また一つのいすをめぐって大変な大統領選挙戦がアメリカ合衆国から伝えられてきたりもします。
いすの原点はこんなにも豪華なものであり、そこにはいろんな技が使われています。大変優美な文化と職人技が花開いた桃山時代。しばし、誇り高い日本文化を眺めながら、タイムスリップを楽しむことにいたしましょう・・・。
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