呼声(よびごえ)

 主人に無断で旅に出かけ、昨夜帰ってきた太郎冠者。腹を立てた主人は次郎冠者をお共に連れて、太郎冠者の私宅へ出向く。しかし、太郎冠者は叱られるのが分かっていて、そうやすやすと出てくるはずもなく、案の定居留守を使って姿を見せようとしないので、主人と次郎冠者は、さまざまな節回しで太郎冠者を呼び出そうとするのだが・・・。

 太郎冠者を出てこさせようと、次から次へ面白い節を謡っているうちに、どんどん盛り上がってくるのが見どころ。さて、太郎冠者は出てくるのでしょうか?

二人袴(ふたりばかま)

 今日は聟入りの日。舅の家では準備を整え、聟が来るのを心待ちにしている。一方の聟は、一人で行くのは心細いからと父親に舅の家の門前まで付き添われてやってくる。聟に礼装の長袴をはかせてやり、父は表で待っていたのだが、太郎冠者に見つけられてしまい、父親も舅に挨拶することになってしまう。しかし、長袴は一つだけ。さて、この親子はどうやってこの場を切り抜けるのか・・・。

 聟の天真爛漫な態度に慌てる父親の姿を見ていると、自然と心が和ませられます。舞台から漂うほのぼのとした雰囲気をお楽しみください。

黒塚(くろづか)

 熊野山伏の祐慶(ゆうけい)<ワキ>一行は、旅の途中、日暮れて陸奥安達原にさしかかり、ある老女(前シテ)の所に宿る。老女は糸車を回してみせながらわが身を嘆く。また糸つくしの歌を歌ったりする。そして夜が更けて寒さが増すと、薪を採りに出ようととし、その間寝室を覗かぬように念を押す。−中入りー

 共の能力(のうりき)<アイ>が誘惑に耐えられずに寝室を覗いてみると、人間の死骸が散乱している。一行は鬼女の住む黒塚と知り、急いで逃げる。やがてこれを知った鬼女<後シテ>が追いかけてくるが、祐慶が祈って追い払う。小書に観世流の「長糸之伝」、金剛流の「糸車」、喜多流の「替装束」などがある。前場の老女の孤独な述懐と後場の鬼女の怒りと、人間の二面性が見られる。「拾遺集」雑下などの黒塚伝説に拠ったもの。(出典 能・狂言図典 小学館)

戻る