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舞囃子・小督(こごう)あらすじ
 
  中秋名月の夜、嵯峨野は法輪寺のほとり、侘しくも亦侘しく聞こえてくる琴の音。奏でるのは、時の中宮を憚り、身をひそめている高倉の帝側近の小督の局であった。これを訪ねてあらわれる馬上の勅使、弾正の大弼仲國(だいひつなかくに)。この曲は、殿上にてしばしば聞きし相夫恋(そうぶれん)の曲と、馬からおり耳を傾けた。正しく局の琴の音なので、案内を乞い勅諚を傳えたのであった。

 局は直々の御文を有難く拝受し、在りし日の古る事など思い浮かべ涙するのであった。ご返事を渡す小督の局、仲國は舞をまって慰め、別れを惜しみつつ返書を懐中に、再び馬上の人となり都へ帰って行ったのである。
(参考、宝生流謡本)