七騎落(しちきおち)あらすじ 戻る


 源頼朝、石橋山の合戦に破れ、主従八騎となって船で遁れようとした。然るに源家ではこれまでの戦において、八騎にて悲運の例あり。頼朝この不吉の数を嫌い、土肥實平(どひさねひら)に船から一人下ろせと命じた。實平船中を見渡すに、いずれも誠忠の武士、誰一人引き下がる気配なし。仕方なく岡崎義實(よしざね)に下船を命じたが、義實は命を二つ持っている者から下船せよといってきかない。そのわけは、昨日自分は一子を討ち死にさせ、今日は命が一つになったが、土肥殿は親子にて命二つ持っておられる。なるほど理が通っているとして土肥は愛子、遠平を下船させた。陸では大勢の兵が押し寄せ、一同哀れな心持で船を遠ざけていったのである。
 かようにして頼朝の船は海上遙かに浮かび出たが、後から、かねてより頼朝方に意を通じていた和田義盛が遠平を生け捕る風を装い船に乗せて追っかけてきた、これにて一同大いに喜び、實平は喜びの舞をまひ、源氏の前途を祝福したのである。
(参考、宝生流謡本)