能・鵜飼(うかい)あらすじ 戻る


 安房の清澄寺の僧侶、一人の従僧を連れ甲斐の国石相川に辿り着く。一夜を明かす辻堂に鵜飼の老人あらわれ、僧は殺生の罪深きを説く。従僧が二三年前にこの川下で年とった鵜飼に逢ったことを語るや、老人これを聞き、その者殺生禁断のところにて鵜を使っていたが遂に捕らわれ非業の死をとげた。われはその鵜飼の亡霊であると明かし姿を消していった。
 僧哀れに思い川瀬の石に法華経を一石に一字づつ書き川に沈め鵜飼を弔うところ、閻魔王あらわれ出で、彼の者殺生の罪科により地獄へ堕すべきところ、僧を一宿させた功徳と法華経の利益もあり、仏所に送り仏果を得させん。法華経の功徳と慈悲を勧めて閻魔王は立ち去った。
(参考、宝生流謡本)