ハイパーフォーラムは 全国に報道されました

2001年12月13日(木) 読売新聞 

建築のデザイン 調和に自然素材

藤森照信・東京大教授 フォーラムで講演



       
 地域文化のための新しいアイデアを全国発信していこうと、サントリー文化財団が毎年、開催地を変えながら企画している「ハイパーフォーラム『地域は舞台』」が今月、福井県今立町で開かれた。今回のテーマは「デザインすること」。 「路上観察学会」の活動で知られる建築史家の藤森照信・東京大学教授が「素材がつくる地域のデザイン」と題して基調講演。自然素材の建築の美しさについて語った。

 ポルトガルの山地の岩でできた家や、イギリスの二百五十年前の樹上の家など、海外のユニークな例を示した後、自ら設計した建築を紹介。 最初の作品、神長官守矢史料館(一九九一年、長野県)では、製材していない丸太をメリメリと割る古代技法で板にして、荒々しい自然の風合いの壁を作った。

 静岡県天竜市立秋野不矩美術館(九八年)は土の壁。 自宅は、屋根と壁一面に日本タンポポを植え付けた「タンポポハウス」(九五年)、友人の画家で作家、赤瀬川原平さんの家は、ニラを植えた「ニラハウス」(九七年)として有名だ。

 「近代化の過程で町や村を汚くしたのは日本だけ。その理由を三十年間、考えてきた。色を統一したり、町並み保存でよく使われる方法だが、屋根などのかたちをそろえる試みもあったが、やはりダメだ。結局、調和を保つのは、素材だと気付いた」 鉄とガラスとコンクリートの近代建築に対し、“藤森建築”が、伝統的な木や土の自然素材にこだわるゆえんだ。「新しい目でとらえ直そうと、いろんな実験をしてきた」と藤森教授。 

 パネルディスカッションでは、デザイナーの梅原真さんが地元高知県での仕事について報告。何もない浜辺にTシャツ千五百枚が翻る「砂浜美術館」を企画、全国から観客を集めたという。 滋賀県長浜市の笹原司朗さんは、歴史的建造物の黒壁を再生させ商店街に客を呼び戻し、島根県の旧石見銀山を拠点にするデザイナー、松場登美さんは、生活雑貨、衣料品の独自ブランドを全国展開。手漉き和紙の里、今立の活性化を図る辻岡俊三町長も、町の取り組みについて話した。

 いずれも既存の建築や自然を活用しながら、新しい美しさを出現させている。藤森教授は「みなさんのお話を聞いていて、なかなか日本も大丈夫かな、という気がしてきた」とコメントした。(恭)



2001年12月8日(土) 日本経済新聞

ハイパーフォーラム
街のデザインを討議




 地域と文化について考える「ハイパーフォーラム『地域は舞台』」(サントリー文化財団など主催)の第九回が和紙の里、福井県今立町で開かれた。今回のテーマは「暮らしをデザインする まちをデザインする」。講師からは独自の視点で地域の魅力を見つけ、それを生かした街づくりを仲間とともに進めることなどが提案された。

 基調講演した藤森照信・東大教授(建築史)は「街が美しくないのが日本の弱点。そこで自然素材だけを使った建物や自然を取り込んだ建物を自ら設計するようになった。屋根などにタンポポやニラを生やした家はその一例」などと話した。

 パネル討論では、高知県大方町で自然そのものを美術館に見立てる「砂浜美術館」などを企画したデザイナーの梅原真さんが「マイナス面をプラス面ととらえ、自分の街を楽しむことが大切」と語った。「古い建物を残すだけではダメでそこに新しい命を吹き込まなくては」と強調したのは、滋賀県長浜市でガラス工芸による商店街活性化を進める笹原司朗・黒壁社長。 島根県大田氏で衣料品などの独自ブランドを全国展開する松場登美・石見銀山生活文化研究所長は「人がいるから街があるのであり、すばらしい仲間が一番刺激を与えてくれる」と地域住民主体の街づくりを訴えた。
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