仏教の根本「初転法輪」

 釈尊生涯の大きな節目といえば、誕生、四門出遊、結婚、出家、成道、初転法輪、そして入滅へと続く。この中に出てくる「初転法輪」とは釈尊が仏陀として最初に説法した仏教における根本教説である。古代インド王の持つ輪が転がり敵を破ったように、仏の説法も衆生の迷いを破するところから法輪といわれ、その最初であるからこの名がある。そして、この教説の内容は四諦八正道として示されている。

 仏教とは仏陀の説かれた教えであり、私達を仏にならせる教えである 。仏陀とは目覚めた者であり、その教えの特徴は「大機説法」と「応病与薬」にある。四諦とは苦諦、集諦、滅諦、道諦である。人生の真相は苦であるとする「苦諦」には生・老・病・死の四苦と、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の四苦を合わせての八苦がある。

 このように人生の真相は苦であり、その原因は煩悩であるという真理を「集諦」という。煩悩には貪欲・瞋恚・愚痴の三毒の煩悩があり、その根本には渇愛と無明がある。人生の苦を滅した境地が涅槃であるという真理を「滅諦」といい、この涅槃を実現する方法が「道諦」である。道諦の内容を示したものが八正道で、正見・正思惟・正語・正業・正命・正精進・正念・正定の八つを指す。

 四諦とは迷悟両界の因果の真理を示したもので、仏教を簡潔に表現するなら、それは因果の教えであり自業自得の世界であるといえる。また、苦を滅して涅槃を実現する道諦―八正道が実践修行であることに大いなる意義が存するのである。

 さて、苦行林で肉体をさいなむ行ををされた釈尊が、真の幸福、まことの解脱を得る道ではないと、苦行の放棄をされ、以後中道を歩まれる。―自らを燈とし、法を燈とし、他を燈とするなかれ、自らに帰依し、法に帰依し、他に帰依するなかれ―

c 千秋