日野山トンネルトンネルを抜けると(そこは)雪国であった。

 川端康成の「雪国」の冒頭 は有名です。ゆったりとした時間の流れを感じます。現在の旅は車であるなら高速道路を利用することも多いですね。高速道路は単調な走りとなりますから、トンネルに入ると俄然緊張します。

 日野山トンネル内はオレンジの照明でまるで別世界の様相がします。しかし一刻も早く抜け出したいと思うのは、どこのトンネルでも同じです。この息苦しい閉塞感はトンネル独特のものです。

 こういった掘削技術は日本のお家芸なのでしょうか。お坊さんがコツコツ掘った青 の洞 門は有名です。我が家にも立派な井戸があり、レンガで囲まれた丸い井戸を覗くとき、その高度な仕様に驚きます。資源乏しい日本では石炭に代表される掘削の為の技術が発展したと聞いたような。

 トンネルを一本掘ることによって、その地域の生活圏に大きな変動が起こります。目の前の障害物は取り除く的なやり方は、人間にできないことはないという思い上がりのような気もします。山があって川があり、それぞれの地域の特性が育まれてきました。 

 国道を走ってごらんなさい。行っても行っても同じようなパターンの繰り返し。「どこへ行っても同じだよ」とは、よく聞きます。ワクワクするような風景は、もう道路上にはないのではと思ったりします。

 そこへ行かなければ絶対味わえない雰囲気、そういった個性がいたるところにある日本に戻って欲しいような気がします。旅行なら海外が国内よりも安いとか、いろんなことを聞きます。

 【阿呆(あほう)というのは、人の思はくに調子を合わせてさう云ふだけの話で、自分で勿論阿呆だなどと考えてはゐない。用事がなければどこへ行ってはいけないと云ふわけはない。なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思ふ。】内田百閧フ第一阿呆列車の始まり。一度はこのような、おおらかな旅がしてみたいですね。

・・・トンネルを抜けると(そこは)雪国

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